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介護施設における様々な効果

事例に見る学習療法の様々な効果

効果 1:学習者にとっての効果

学習療法の効果は認知症高齢者の日常生活面に現れます。尿意を取り戻したり、笑顔が増えたり、他人への思いやりが戻ったりします。つまり、認知症を患う以前の“その人らしさ”を取り戻していきます。

◆福岡県/社会福祉法人 道海永寿会の事例
Iさんは2003年1月、101歳で学習を始めました。当初、誰もが学習は無理と考えていましたが、数字や文字を読むことができることがわかり周囲を驚かせました。不穏な時も学習を始めると落ち着き、1ヵ月後には会話での意思疎通がスムーズになり、8ヵ月後には要介護度も5から4に改善しました。
●学習を始める前の状態
・常時おむつ。入浴、更衣も全介護
・精神状態が不安定で、幻視、幻聴あり
・昼夜逆転。夜間、不穏になると大声をだす、廊下を徘徊し、朝まで壁をたたき続ける
●学習開始後の状態
・排泄の訴えができるようになり、尿意を感じると車いすでトイレへ。やがておむつも取れた
・幻覚等の周辺症状がすっかりおさまった
・夜間の徘徊もなくなり、夜は安眠できるようになった
《日常生活改善の代表的な例》
・笑顔が増え、自分から意思表示をするようになる
・転倒が減る
・尿意を訴えるようになる
・会話が通じるようになる
・昼夜逆転が改善される
・認知症の周辺症状が改善される

―アンケート結果より―

2012年に学習療法を導入している約130施設へ、学習療法の効果についてアンケートを実施しました。その結果、学習者にとっての効果については、スタッフの多くが以下のような項目に「効果が期待できる」とする回答が得られました。

効果 2:スタッフにとっての効果

学習療法を行うことで、利用者の認知症の改善効果ばかりではなく、学習を支援するスタッフにも様々な変化が見られています。

●コミュニケーション力の向上
学習療法によって、個々の利用者との関わりが増え、深いコミュニケーションをとる機会も増えます。従来のようにスタッフからの一方的な指示ではなく、双方向のコミュニケーションがとれるようになります。
●観察力、気づき、記録、報告の力の向上
利用者を様々な視点から見ることができるようになります。観察力が向上し、利用者の変化に気づくのが早くなります。この気づきを記録、報告する力も向上し、スタッフ間での情報交換の量が拡大します。学習療法を続けることで変わっていく利用者と接することで、どんな人にも「何かしらできることがある」ということを実感し、さらにその人の残存能力を見つけ出し、それを活かそうと考えるようになります。つまり、気づきをケアに活かしていこうという意欲が増します。
●ケアの視点、考え方の変化
利用者を深く知ることで、“寄り添う”介護ができるようになります。また、利用者の過去や人となりを知り、その人を尊敬する気持ちも生まれてきます。利用者全体に対しての介護の質も向上します。

◆茨城県/介護老人保健施設 プロスペクトガーデン ひたちなかの事例

スタッフが利用者(学習者)の変化に気づくと、さらなる利用者の日常生活の改善を期待する気持ちから、細かな変化も見逃さない“気づき力”と“観察力”が高まりました。
また、利用者の可能性を感じるようになると「○○さんは、もしかしたらあれもできるかもしれない」と、可能性をもっと引き出そうとする“洞察力”や“工夫する意欲”が養われていきました。
明確な目的を持ったこうした活動を毎日実践し続けることで“忍耐力”も育まれてきました。
こうした利用者の変化とスタッフの成長という循環が、利用者の「やる気」「生きがい」「自分らしさ」を取り戻すという、利用者主体の介護の実践につながっています。

―アンケート結果より―

学習療法は学習スタッフ(職員)の成長に役立つと思いますか?

効果 3:家族にとっての効果

認知症の親がいきいきと学習する様子をその家族が見たり、施設での日常生活の様子を知ったりすることで、施設に対する家族の見方が変わります。家では見せなくなってしまった認知症の親の表情の変化は、施設に対する信頼を高めてくれます。

たとえば通所施設での送迎の場面で、スタッフとご家族が利用者の話題での会話に深みと厚みが増してくれば、家族とスタッフとの間の信頼関係はますます増していきます。家族会などで、入所施設を訪問した家族が、スタッフと一緒に笑顔いっぱいで学習する利用者の姿を見れば、「この施設でよかった」という気持ちになります。家族と同様に寄り添ってくれるスタッフや施設の姿勢に感動して、感謝されることが多くなります。

◆香川県/特別養護老人ホーム 絹島荘の事例

導入1周年を記念した家族との交流会で、家族が見守る中、学習者全員が一斉に学習療法を実施しました。家族の参観とあって、どの学習者もいつも以上に張り切って学習を楽しみ、そのいきいきとした様子に家族も大喜びしました。
学習者にとっても家族にとっても、またスタッフにとっても、この一斉学習は予想外の収穫でした。以後、「学習サロン」と名づけられたこの催しは月に一度実施されています。
家族との交流会の別の面での成果としては、担当のケアマネージャーが参加して学習療法への理解を深めているということがあります。ケアマネージャーを招待することで、学習療法に強く共感していただくことができました。
●「想い出日記」の誕生
また、絹島荘では、学習の状況を記録する日々の日報から、学習者の「想い出日記」というものを作成して家族と共有しています。日報は学習者の言葉をそのまま記録し、スタッフの気づきや感動したことを記録するのがこの施設の方針。この日報から家族へのお便りを作成しようと見直していると、日々蓄積された膨大な量の日報の中から学習者の生きた時代背景や思い出のストーリーなど、個人の歴史が見えてきました。そこで、この日報から「想い出日記」が誕生したのです。
家族も知らないような日常の生活や学習者の気持ちがふんだんに盛り込まれた「想い出日記」は、家族と施設を結ぶかけがえのない絆づくりに貢献しています。

―アンケート結果より―

効果 4:施設にとっての効果

利用者やスタッフの変化、そして家族との絆は、施設における介護の質にも変化をもたらしています。それは学習療法を通じてスタッフのモチベーションが向上することによる変化でもあります。

利用者とのコミュニケーションが向上することで、個別ケアの視野が広がったり、スタッフ同士の会話においても、利用者についての話題が多くなったりします。学習療法という共通の手段を持つことで、職種・職域や担当を超えた情報の共有が広がっていきます。

施設にとっての学習療法の効果とは? 高齢者介護とは何なのか? を施設のスタッフ全員があらためて考えるようになるということです。

―アンケート結果より―

学習療法を導入後、施設の雰囲気が明るくなりましたか?