- 脳と認知症
- 脳の働きと前頭前野
- 読み書き・計算
- 川島教授共同開発研究
脳と認知症
加齢にともない脳の働きが衰え、それが重度になった状態が、一般的に「ボケ」と呼ばれている老人性認知症です。
脳科学の知識をベースに認知症の改善をはかる「学習療法」の理解を助けるために、脳と認知症の関係、読み書き・計算の効果について解説します。
物忘れと認知症
人間は年をとると物忘れが多くなります。「人の名前が出てこない」、「朝、何を食べたか、忘れた」などです。これは老化のひとつで、自然なことで、生活上も支障ありません。
これに対して、老人性認知症が進行すると、体験や出来事のすべての記憶を失っていきます。朝食を食べたことそのものを忘れてしまいます。困ったことに、忘れていること自体がわからなくなりますので、社会生活、日常生活に支障をきたします。
前頭前野と老人性認知症
老人性認知症の方と接するとき、第1に問題となるのがコミュニケーションの障害です。言葉を介したコミュニケーション、そして表情などの言葉を介さないコミュニケーションの双方がうまくいかず、他者との意思の疎通が困難になります。感情のコントロールが効かず、突然怒りだして周囲の方を困らせることも問題です。
そして第2の問題は、身辺の自立です。食事や衣服の着替えなど他人の手助けが必要となります。
これらの問題点、つまりコミュニケーション、感情、身辺の自立などは、すべて大脳にある「前頭前野」という領域がコントロールしています。つまり、老人性認知症の原因は様々ですが、社会で問題となるその症状のほとんどは、前頭前野の機能に関係するものなのです。
学習療法は、この前頭前野を活性化させ、認知症の改善をはかるものです。さらには、健康な高齢者の認知症予防にも応用されています。
認知症の原因とその予防
認知症の原因となる病気はたくさんありますが、多くは「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」の2つのタイプです。原因となる病気を適切に治療することで、治療が可能な認知症もありますが、それは全体の約10%程度といわれています。
脳血管性認知症の予防は、高血圧や糖尿病などの成人病の予防が中心になっていますが、アルツハイマー型認知症の予防法は、まだ明らかになっていません。また、いずれの認知症も、認知症状態になってしまってからの脳機能の回復は非常に困難です。
端的にいうと、加齢により脳の働きが衰え、それが重度になった状態が、いわゆる老人性認知症です。医学的研究から、加齢にともない前頭葉の萎縮が進むこと、また、前頭葉機能に障害が発生することがわかっています。とくに認知症高齢者では、前頭葉の血流や代謝が低下していることが明らかにされてきました。
アルツハイマー型認知症
神経細胞がどんどん死滅していくことが特色で、発生原因はいまだ特定されていません。老眼で視力が低下し、新聞や本を読まなくなった、聴力低下で会話が困難となり、外出時や家庭内でのコミュニケーションが取りづらくなったなど、脳を使わなくなったことが原因の、「廃用性認知症」と呼ばれる認知症の多くも、晩発性のアルツハイマー型認知症に分類されるとの考え方もあります。この晩発性のアルツハイマー型認知症が、日本人の老人性認知症において最も高い割合を占めているといわれています。
脳血管性認知症
高血圧や糖尿病などの生活習慣病をきっかけに、脳血管の動脈硬化が進行して脳の深い部分にある動脈が詰まる病変が多数できることがおもな原因です。神経細胞から伸びる神経線維のネットワークが寸断され、脳機能が著しく低下すると考えられています。広範な脳梗塞や脳出血により脳が破壊されて認知症状態になる場合もあります。
認知症の症状
認知症の症状は、中心となる症状と、それに伴って起こる周辺症状に分けられます。
中心となる症状とは直近のことを忘れたり同じことを繰り返したりする記憶障害や、今がいつか、ここがどこかなどがわからなくなる見当識障害、それに判断力の低下などで、認知症高齢者に必ずみられる症状です。周辺症状は人によって差があり、右のような症状が見られます。


