くもん学習療法センター

効果の実証: 認知症改善を示すデータ

学習療法の効果と、その科学的な根拠とは?
脳機能の改善を示す研究データをご紹介します。

はじめに

東北大学川島隆太教授を中心とする研究チームが、学習療法の効果を調べる実験を行いました。

研究期間 平成17年6月~平成18年1月
研究場所 岐阜県 6施設喜の里 ⁄ ひだまり ⁄ せせらぎ緑風苑 ⁄ 花時計 ⁄ サントピアみのかも ⁄ シクラメン
研究対象 学習群 89名(平均年齢 73.9歳)
対照群 17名(平均年齢 82.2歳)
研究体制 上記6施設 ⁄ 東北大学 ⁄ (株)くもん学習療法センター

研究方法

学習療法を半年間実践した89名のグループ(学習群)と、実践しなかった17名のグループ(対照群)に、2種類の脳機能検査(前頭葉機能検査FAB(ファブと読みます。以下同様です。)、認知機能検査MMSE)を行い、結果を比較しました。

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研究方法の詳細

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  • 高齢者施設の高齢者89名(平均年齢73.9歳:60~97歳)に、1日平均15分間程度の音読と計算(学習療法)を週に5日間行ってもらいました。
  • 音読はひらがなを読むレベルから物語を読むレベルまで、計算は数を数えるレベルから引き算のレベルまで、高齢者の方のレベルに合わせたプリント教材を用いました。
  • 学習療法を開始する前と開始6ヵ月後に、前頭葉機能をFAB検査、認知機能をMMSE検査によって測定しました。
  • 日常のケアだけを行った場合の対照データとして、宮城県仙台市泉区介護老人保健施設・老人病院エバーグリーン・イズミに入所している17名の高齢者(平均年齢82.2歳:69~90歳)の同じ脳機能検査結果を参照しました。

前頭葉機能検査(FAB(ファブと読みます。以下同様です。))

FAB(Frontal Assessment Battery at bedside=前頭葉機能検査)は、前頭葉機能を簡便に測定できる6項目の面接形式の検査です。

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FABで質問される項目

FABで質問される項目

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満点は18点。健常な人はだいたい8歳以上で満点がとれます。

1. 概念化課題

この課題では例えば「バナナとみかんはどこが似ていますか?」という質問をします。この質問に対して口頭でどこが似ているのかを答えてもらいます。

言語による概念操作に関連しますので、右利きの人では左半球の前頭前野(ぜんとうぜんやと読みます。以下同様です。)の活動を反映すると思われます。

2. 知的柔軟性課題

「か」からはじまる言葉をできるだけたくさんあげてください」と質問します。おもに言葉を作り出す領域、つまり、右利きの人では左半球の前頭前野の活動を反映すると思われます。

3. 行動プログラム課題

この課題では自分の左手の掌を右手でグー・手刀・掌で順番にたたいてもらいます。Hand-fist-palmと呼ばれていますが、前頭葉の中でも運動プログラムに関与する高次運動野の機能を見るものです。

4. 反応の選択課題

この課題ではルールを決めた指運動を行ってもらいます。「私が指で1回ポンとたたいたら、続けて自分の指で2回ポンポンとたたいてください。私が2回指でポンポンとたたいたら、自分の指で1回ポンとたたいてください」とルールを説明したうえで、

ポン(1)-ポン(1)-ポンポン(2)-ポン(1)-ポンポン(2)-ポンポン(2)-ポンポン(2)-ポン(1)-ポン(1)-ポンポン(2)

と指でたたいて見せて、ルールにそって指をたたくように指示をします。ルールに従った運動の発現は前頭葉の高次運動野と前頭前野内側面、どのように指をたたいたのかの短期記憶も必要になりますから前頭前野の機能を見ていると考えられます。

5. GO/NO-GO課題

前述の反応の抑制課題とよく似ていますが、指を1回ポンとたたいたときは同じように1回、2回ポンポンとたたいた時にはたたかないというルールを設けます。

反応の選択課題で必要となる脳の領域のほかに、行動(指運動)を抑制する両側半球の前頭前野の機能を見ることになります。小学校1年生くらいだと、この課題ができないことがあります。

6. 把握行動課題

被験者の両手を机の上に掌を上向きにおき、その後「私の手を握らないでください」と言ってから、ゆっくりと両手を被験者の掌に近づけていきます。前頭葉に病変のある患者さんでは反射的に手を握ってしまうことが知られています。

行動の抑制機能を見る課題で、両側半球の前頭前野の機能を反映するものと考えられます。

認知機能検査(MMSE)

MMSE(Mini-Mental State Examination=認知機能検査)は、認知機能や記憶力を簡便に測定できる11の項目からなる検査です。

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MMSEで質問される項目

MMSEで質問される項目

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満点は30点。総合得点が21点以下の場合は、認知症などの認知障害がある可能性が高いと判断されます。

  1. 口頭で「今日は何日ですか」「今年は何年ですか」「今の季節は何ですか」「今日は何曜日ですか」「今日は何月ですか」質問する。
  2. 「ここは何県ですか」「ここは何市ですか」「ここはどこですか」「ここは何階ですか」「ここは何地方ですか」という質問をします。
  3. 3つの言葉を言い、その後、被験者にその言葉を、繰り返し言ってもらう。
  4. 100から順に7を繰り返し引いてもらう(5回)。
  5. 3)で提示した3つの言葉を再度言ってもらう。
  6. 時計を見せながら「これは何ですか?」、鉛筆を見せながら「これは何ですか?」と聞く。
  7. 次の文章を反復させる。「みんなで力を合わせて綱を引きます」
  8. 何も書いていない紙を渡し、「右手にこの紙を持ってください」「それを半分に折りたたんでください」「それを私にください」といっぺんに指示をして、そのとおりにしてもらう。
  9. 「目を閉じてください」と書いたものを見せて、その指示に従わせる。
  10. 何も書かれていない紙を渡して、「何か文章を書いてください」と指示をする。
  11. 重なった2個の五角形を見せて、それを模写させる。

MMSEの結果判定

前述の11の設問はさまざまな認知能力と記憶力を見ているものと考えられます。MMSEの総合得点によって、

  • 27~30点・・・正常値
  • 22~26点・・・軽度認知障害の疑いがある
  • 21点以下・・・認知症などの認知障害がある可能性が高い

と判定されます。健常者が21点以下を取ることはきわめてまれであるとされています。

結果

  • 学習群は、前頭葉機能・認知機能がともに改善されました。
  • 対照群は、前頭葉機能・認知機能がともに悪化しました。

6ヵ月の学習によるFAB得点の変化

6ヵ月の学習によるMMSE得点の変化

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脳機能検査結果の詳細

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FAB得点結果
  • 学習群のFAB得点は、学習開始前平均8.8点でしたが、6ヵ月後には平均9.5点と統計的に有意に改善しました(p < 0.01; paired t-test)。89名中49名(約55%)の前頭葉機能が改善され、20名(約22%)の前頭葉機能が維持されました。
  • 対照群のFAB得点は、平均10.4点が9.0点と統計的に有意に悪化しました(p < 0.05; paired t-test)。対照群の約80%で前頭葉機能が経過観察中に悪化しました。
MMSE得点結果
  • 学習群のMMSE得点は、学習開始前平均17.5点でしたが、6ヵ月後には平均18.7点と統計的に有意に改善しました(p < 0.001; paired t-test)。89名中52名(約58%)の認知機能が改善され、20名(約22%)の認知機能が維持されました。
  • 対照群のMMSE得点は、平均18.2点が平均16.9点と統計的に有意に悪化しました(p < 0.05; paired t-test)。対照群の約80%で、認知機能の悪化が認められました。

まとめ

今回の研究の結果、学習療法によって、認知症高齢者の脳機能低下の進行を防止し、逆に脳機能を改善する可能性が示されたと言えます。

平成17年度岐阜県「学習療法」共同研究6施設成果報告書
(東北大学 加齢医学研究所教授 川島隆太、平成18年4月25日より)


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