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学習療法センター最前線

SIB調査 最終結果

2015年7月にスタートし、2016年の6月末に終了した「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)調査事業」の結果を慶応大学の研究者が分析し、2016年9月、記者発表という形で公表しました。
今回の調査によって「学習療法」「脳の健康教室」を行うと、利用者、利用者の家族、学習支援を実践した施設・教室に、大きな社会的・費用対便益がもたらされることが明らかになりました。

【調査概要】

平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業(ヘルスケアビジネス創出支援等)に、SIBの導入を前提とした実証調査事業に採択され、学習療法や脳の健康教室を実施している介護施設や自治体の協力を得て、5カ月間(2015年7月~11月)の調査を実施。
学習療法導入施設については、調査開始から1年後のデータを取るために、学習療法センターが主体となって2016年6月末まで調査を継続し、慶應義塾大学の研究者に第三者評価機関の立場で調査結果の解析を依頼した。

【SIB調査結果を分析した研究者】

◎医学観点の検証   佐渡 充洋  慶應義塾大学 医学部 精神・神経科学教室 専任講師
◎社会学観点の検証  伊藤  健  慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任講師

★医学観点からの検証結果

(1)「学習療法」実施群と実施しない対照群とでは、1年後の要介護度に「1」近い差が出ました

学習療法を1年間実施された認知症高齢者の方々は、要介護認定基準時間が1年後ほとんど変わらなかったのに対し、学習をされなかった方々は介護度が進みました。
認知症高齢者の方々の自立度を、要介護認定基準時間の変化量で比較したところ、学習療法をされた方々とされなかった方々との間に、要介護度に「1」近い差が出ました。

(2)「学習療法」実施群は1年間で平均20万円近い介護費用の削減効果があることがわかりました

今回の調査に参加いただいた皆様のデータを元に、介護保険の費用対便益分析を実施したところ、費用対便益がプラスになる確率は約91%となり、1人あたり1年間で平均20万円近い、介護費用の節減効果があることが明らかになりました。

★社会学観点からの検証結果

今回の調査では、「学習療法」実施施設で1年間、元気な高齢者向けの認知症予防プログラム「脳の健康教室」で半年間、脳機能等の客観的指標測定とアンケートによる主観的評価の分析を実施したところ、次の結果が出ました。

(1)「学習療法」の導入によって、施設スタッフのコミュニケーションの質が改善し、ケアの質の向上を実現する機会を提供していることが明らかになりました

学習療法導入施設の職員に対し調査したところ、90%以上の職員が学習療法による対象者の認知機能回復を感じ、ケアが容易になったことを実感。学習療法を行うことで、施設の中で学習者や同僚とのコミュニケーションを活性化していると回答しました。
この調査により、学習療法導入が、施設職員のやる気につながり、ケアの質の向上を実現していることが示唆されました。

(2)認知症予防プログラム「脳の健康教室」に週1回5か月間通った結果、認知機能の維持・改善傾向が明らかになりました

東北大学 川島隆太教授との共同研究で、「脳の健康教室」の認知機能の維持・改善効果はすでに実証されていましたが、今回の調査事業においても、認知症及び軽度認知障害(MCI)の疑いのある方々が、約半年の学習で認知機能に改善効果があったことが明らかになりました。

【SIB調査後の反響】

2015年7月から始まったこの調査では、学習療法・脳の健康教室のように、効果的なケアやサービスを高齢者に提供すると、予想以上の社会的・経済的な効果があることが明らかになりました。
また、今回の調査がきっかけとなって、国が初めて制作した介護保険外サービスの優良事例を集めた「保険外サービス活用ガイドブック」に、学習療法と脳の健康教室が紹介されることになったのです。

【ご参考】SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)とは
2010年にイギリスで開発された、新しい官民連携の社会的投資モデルのこと。
https://www.fasid.or.jp/_files/activities/BBL207_Part1_PPT_SIB_140704.pdf
(参考資料:慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 伊藤健 特任講師)