KUMON 学習療法センター

学習療法とは

「学習療法」とは、東北大学の川島隆太教授による最先端の脳科学研究の知見をもとに、東北大学と福岡県の特別養護老人ホーム永寿園様、そして、学習療法センターの三者による共同研究の結果誕生したプログラムを活用したもので、認知症の進行抑止・改善をはかる非薬物療法として、日本とアメリカの高齢者介護施設で活用いただいております。
学習療法は、脳を活性化することで、ご高齢者の自立支援をはかるとともに、関わる介護スタッフの成長ややりがいにもつながり、さらには、施設全体のケア力の向上や、ご家族の喜び、地域貢献にもつながるものです。
学習療法センターは、高齢者介護施設と契約を結んで、教材やノウハウなどのプログラムを提供しています。

学習療法とは
  • スラスラ楽しくできるレベルの「読み書き・計算」教材と「磁石すうじ盤」を⾏います。
  • 「読み書き・計算」教材は、脳科学理論に基づきKUMONが開発した高齢者専用オリジナル教材です。
  • 研修を受け、学習療法実践士の資格を持ったスタッフとコミュニケーションをとりながら⾏います。
  • 学習は、1回20分~30分です。
  • 効果を高めるために、入所施設では週5回を基本として3回以上、通所施設では原則として全開所日に学習時間を設定し、通所日に学習します。

学習療法の定義

学習療法とは、音読と計算を中心とする教材を用いた学習を、学習者と支援者が、コミュニケーションを取りながら行うことにより、学習者の認知機能やコミュニケーション昨日、身辺自立機能などの前頭前野機能の維持・改善を図るものである。

KUMONレポート(動画)~学習療法デイサービス編~

学習療法の理論

学習療法の理論

学習療法の理論についてご紹介しています

脳の司令塔「前頭前野」

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態です。
その脳の中で、人間だけが他の動物と異なり、おでこの後ろ側にある「前頭前野」という場所が発達しています。人間を人間たらしめている部分こそが、この「前頭前野」であり、別名「脳の司令塔」と言われています。
では、その前頭前野にはどんな働きがあるかというと、主に9つあると言われています。
①「思考する」②「行動を抑制する」③「コミュニケーション、対話をする」④ 「意思決定をする」⑤「感情を制御する」⑥「記憶をコントロールする」⑦「意識・注意を集中する」⑧「注意を分散する」⑨ 「やる気を出す」
もし、これらを「行動を抑制することができない」「コミュニケーションすることができない」といった具合に、「○○できない」と表現したら、認知機能が低下している状態と言えます。

脳の司令塔「前頭前野」1
脳の司令塔「前頭前野」2

「簡単な計算をスラスラ解くこと」「文章をスラスラ音読すること」が、脳全体を活性化する

脳科学者である東北大学の川島隆太教授は、「Functional  MRI」や「光トポグラフィ」といった器械を使って、どんなときに前頭前野を中心とした脳が活性化するのかを、長年研究してこられました。その結果、簡単な計算をスラスラ解いているときや、文章をスラスラ音読しているときに、脳が活性化することを突き止めました。

「簡単な計算をスラスラ解くこと」「文章をスラスラ音読すること」が、脳全体を活性化する1
「簡単な計算をスラスラ解くこと」「文章をスラスラ音読すること」が、脳全体を活性化する2
Functional MRI

Functional MRI

MRIは放射線を用いず、磁石による磁場と電波を用いて、生体外部から組織を画像化する装置・技術。MRIは主に全身の組織や臓器の構造の観察に用いられ、Functional MRIは脳の機能や活動の観察に用いられます。

「コミュニケーション」が前頭前野を活性化する

さらに、「簡単な計算をスラスラ解くこと」「文章をスラスラ音読すること」と同様に、人とコミュニケーションしているとき、つまり、会話をしているときも前頭前野が活性化することもわかりました。

「コミュニケーション」が前頭前野を活性化する1
光トポグラフィ
「コミュニケーション」が前頭前野を活性化する2
光トポグラフィーで見る脳画像

光トポグラフィ

身体に無害な近赤外線を用いて脳の活動状況を調べる医療用・研究用機器。脳表面にある大脳皮質の血流の変化パターンを計測・画像化します。

~脳機能イメージ研究からわかったこと~

①「簡単な計算をスラスラ解くこと」「文章をスラスラ音読すること」が脳を活性化させる
②「人とコミュニケーションすること(会話すること)」が脳を活性化させる
だから、学習療法・脳の健康教室では、計算・音読・コミュニケーションを大切にしています。

Functional MRI

東北大学 川島隆太教授

プロフィール

1959年、千葉県千葉市生まれ。東北大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。スウェーデン王立カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学助手、講師を経て、現在は東北大学加齢医学研究所教授。脳のどの部分に、どのような機能があるのかを調べる「ブレインイメージング研究」の日本における第一人者である。

学習療法のエビデンス

学習療法のエビデンス

学習療法のエビデンスについてご紹介しています

第1期 学習療法実践研究(福岡県大川市/社会福祉法人・道海永寿会)

2001年9月、東北大学・川島隆太教授をリーダーとする共同研究チームによって、社会福祉法人道海永寿会で初めての学習療法の実践研究がスタートしました。この研究には公文も参加し、独立行政法人・日本科学技術振興機構の助成を受けた産・官・学の共同プロジェクトとして実施されました。
「読み書き」「計算」学習の効果を測定するために、認知症高齢者を学習群と非学習群(学習をしない群)に分け、学習開始前および6ヵ月後にFABとMMSEを実施して両者を比較しました。図1と図2がその結果で、明らかに高齢者の脳機能が改善されていることが分かります。
検査の数値の向上にとどまらず、まったく無表情の方に笑顔が見られるようになったことやおむつに頼っていた方に尿意や便意が戻ってきたという日常生活での変化も認められました。

FAB(Frontal Assessment Battery)

※FAB(Frontal Assessment Battery):
前頭葉の機能を中心に評価する面接形式の検査です。6つの検査で構成され、18点が満点になっています。健常な人では、ほぼ 8 歳以上になると満点が取れます。

※MMSE(Mini-Mental State Examination):
面接形式の認知症スクリーニングテストの一つです。11の分野の検査で構成され、30点が満点になっています。22点未満は認知症などの認知障害の可能性が高い、22~26点は軽度認知障害(MCI)の疑いがある、27~30点は正常であると言われています。

第2期 学習療法実践研究(宮城県仙台市/医療法人・松田会)

2003年6月、道海永寿会での成果を踏まえ、医療法人松田会エバーグリーン病院で学習療法の実践研究が始まりました。この研究は宮城県仙台市と東北大学との「『学都』共同研究プロジェクト」のひとつとして行われ、図3、図4のような結果が得られました。
この研究でもFABとMMSEは学習群と非学習群との間に大きな差が認められましたが、学習群の中の3割の方々のおむつが取れ、着替えが自分でできるようになったという日常生活面での変化が見られました。
特筆すべきは、エピソード記憶という「昨日は本屋に行って雑誌を買った」などという時間や空間を特定して思い出せる個人的な出来事の記憶が戻る傾向が見られたということです。

第2期 学習療法実践研究(宮城県仙台市/医療法人・松田会)1

国家課題SIB調査事業

2015年度、経済産業省から「国家課題」として採択された「SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)調査事業」の中で、学習が要介護認定基準時間の変化に与える影響を調べたところ、図の結果が得られました。
赤い線・学習をした方々の介護度は上がらなかったのに対して、青い線・学習をしなかった方々の介護度は上がっています。1年後には、介護度で1近い差が出ました。つまり、学習をした方々は、介護度が悪くならなかった、という結果が出たのです。

Functional MRI

保険外サービス活用ガイドブック

★「学習療法」が、厚生労働省・農林水産省・経済産業省が連名で策定した 『保険外サービス活用ガイドブック』で、優良事例の1つとして紹介されました。

保険外サービス活用ガイドブック
学習療法の効果

学習療法の効果

学習療法の効果についてご紹介しています

学習者にとっての効果

効果

1

学習者の変化は、脳機能検査の数値の改善だけでなく、生活面にもあらわれます。脳機能が改善、活性化することにより、その人らしさが戻り、生活の質(QOL)が向上していきます。

コミュニケーション面

  • 笑顔が増え、表情が豊かになった。
  • コミュニケーションが増えた。
  • 自分の意思を積極的に示すようになった。
  • スタッフにご自分から話しかけてきたり、ご利用者同士で談笑するようになった。
  • 家に帰ってから家族に通所での様子を話すようになった。
  • 冗談を言って笑わせようとするようになった。

意欲面

  • スタッフや一緒に学習しているご利用者の名前を覚えようとするようになった。
  • 学習を楽しみにされ、生きがいを感じるようになった。
  • 生活全般に意欲が出て、レクリエーションやリハビリにも参加するようになった。
  • しばらく遠ざかっていた趣味にまた取り組むようになった。

身辺自立面

  • 排泄・着衣・食事・掃除・片付けなど自分でできることは自ら行うようになった。
  • 尿意を感じるようになり、スタッフに伝えられるようになった。
  • リハビリに積極的に取り組み、車いすから杖歩行ができるようになった。
  • 家でも簡単な料理や、洗濯物干しをするようになった。

周辺症状の緩和

  • 暴言・暴力が見られなくなった。
  • 夜中壁を叩いて騒いでいた方が、穏やかになり、言葉がやさしくなった。
  • 徘徊がなくなり、落ち着いて座っていられるようになった。
  • 帰宅願望が減った。
  • 被害妄想がなくなった。
  • 夜間良眠されるようになった。

認知機能面

  • ご自分が子どものころのことや、お子さんが小さかったころのご家族の思い出、仕事をしていたころのことを楽しそうにお話してくださるようになった。
  • 短期記憶が改善され、数日前のことも思い出して話をされるようになった。
学習者にとっての効果

ご家族にとっての効果

効果

2

学習療法を通じて上記のように変化される学習者の姿は、ご家族にとっても大きな喜びとなります。

  • 家族や昔のことを思い出し、話してくれるようになった。
  • 意欲が増して、前より元気に、活発になった姿を見て嬉しい。
  • いきいきと学習する様子を見て、驚いた。
  • 介護に協力的になり、介護者の負担が減った。
  • あきらめかけていたが、希望が見えてきた。

スタッフにとっての効果

効果

3

学習療法を行うことで、学習を支援するスタッフにも様々な効果が見られます。

能力の向上

  • 大勢でのレクリエーションと異なり、学習療法は1対2で行うので、その方のことをよく見て、コミュニケーションすることにより、研修で得た知識ではなく、実践で体得するスキルが得られる。
  • 気づき力・観察力が高まる(たとえば、表情や音読するときの様子、書くときの様子、会話のときの様子などの小さな変化に気がつくことで、その日の体調・状態を把握することができるとか、脳梗塞の早期発見につながったこともあるなど)。
  • コミュニケーション力が磨かれる。
  • ご利用者との個別の距離感を掴む練習になる。
  • 学習の記録をつけることで、記録力が鍛えられる。
  • 学習療法での経験が、日常のケアにも活かせる。

やりがい・働きがいの向上

  • 会話が増えて、ご利用者のことをより知ることができるようになった。
  • 送迎の際に、ご家族へ学習療法中の様子を自分の言葉でお伝えすることができる。
  • 学習療法でご本人にもご家族にも喜んでいただけて、スタッフ自身の様々な能力も向上することにより、やりがいや働きがいが向上する。
  • お風呂・トイレ・食事の介助があって忙しい、時間がないとなりがちだが、学習療法でご利用者様の変化を体験することで職員が前向きになり、施設の雰囲気がすべて良くなる。
  • ケアの視点や考え方が変わった(できることを探し、可能性を見出す=自立支援へ)。
  • 自分たちのケアでご利用者を元気にしたい気持ちが向上した。
  • ご利用者の人生や思いを知り、尊敬できるようになった。
スタッフにとっての効果

施設にとっての効果

効果

4

学習者、ご家族、スタッフにとっての効果は、そのまま施設にとっての効果となります。

  • ご家族から感謝されることが増え、信頼度が高まった。
  • 職員同士の情報共有が増え、ケアの質が上がった。
  • 学習療法のやり方をレクなど他のすべての活動にも適用することで、みんなでうまくやっていく方法を考えることにつながっている。
  • スタッフのやりがい、働きがいが向上することで、離職者が減った。
  • 施設としての認知度が高まり、学習療法があるからと選んでくださる方や、ケアマネジャーからの紹介が増えている。
  • 認知症に悩む方は多いので、学習療法を実施している施設へのニーズの高さを感じる。
学習療法の導入事例

学習療法の導入事例

学習療法の導入事例についてご紹介しています

学習療法導入事例集(9事例)

■通所介護施設

■特別養護老人ホーム

■介護老人保健施設

■グループホーム

■小規模多機能型施設

■有料老人ホーム

学習療法を導入するには?

学習療法を導入するには?

学習療法を導入するための概要についてご紹介しています

1.施設導入の概要

学習回数

効果を高めるために、入所施設では週5回を基本として3回以上、通所施設では原則として全開所日に学習時間を設定し、通所日に学習します。

スタッフへの研修

施設内で学習療法を実施するスタッフへ弊社から研修を行い、資格を取得いただきます。

費用のご請求

学習者数と学習状況について、月1回、弊社へ報告書をご提出いただき、それに基づいて、弊社から請求書を発行いたします。

学習療法には2つの資格があります

学習療法実践士

学習療法を導入している施設で、学習療法を実施するために必要な資格です。
弊社の担当者、もしくは学習療法マスターの実施する「実践士養成研修」を受講し、3カ月以上の実践経験を経て、必要な要件を満たすことで取得できる資格です。(2016年4月から運用を開始)

学習療法マスター資格

学習療法実践士の上位資格です。学習療法チームのリーダーであり、学習療法実践士の養成ができる資格です。学習療法を導入している施設で、所属する施設責任者の方から推薦書を提出いただき、弊社の担当者が実施する「マスター養成研修」を受講していただきます。「認定テスト」に合格し、弊社が認定することで取得できる資格です。(2016年4月から運用を開始)

2.学習療法センターのサポート内容

研修の実施

導入後3か月間は初期特別研修期間

個別アドバイスの実施

弊社担当者がご相談を受け、アドバイス

学びと交流の場の設定

研修会や、地域での学びと交流の会など

情報提供

弊社ホームページや定期刊行物(情報誌)、FAX等

3.導入までの流れ

まずは導入に関する資料をご請求ください。
その後、弊社担当者から訪問またはオンラインによりご説明申し上げます。
導入をお決めくださったあとは、以下の流れとなります。

スタート2か月前

詳細の打合せ、「学習療法導入契約書」締結、導入計画書作成、学習療法導入施設見学

スタート1か月前

学習希望者を募集、スタッフ向け研修実施、学習療法実施準備(学習コーナーや準備物等)

スタート月

初回学習日に訪問

4.導入・実施に必要な費用

学習療法には2つの資格があります

【1】初期導入費

11万円(一律1回のみ)
「導入施設登録料&資格登録料」「ノウハウ使用料」「導入時研修マニュアル料」「初期研修及び訪問サポート料」「情報取得や資格登録に使用するホームページ使用料」などが含まれます。

【2】運営備品・物品費用

2~3万円程度
学習療法の実践に必要な備品や物品をご準備いただきます。

毎月必要となる費用(税込)

【1】基本実施料

学習者お一人につき月額2,200円
教材の費用は含まれています。
受益者(学習者・ご家族)負担のケースが一般的です。
教材のみの販売はしておりません。

発生ごとの費用

【1】物品費用 (斡旋物品を購入した場合の費用)
【2】送料 (ご請求いただいた教材および物品の送料)

導入施設一覧

全国の導入施設をご覧いただけます。

施設形態表記について

※下記の都道府県の市区郡の並び順は郵便番号の並び順です。